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公開日:2019.10.07 / 最終更新日:2025.09.12
採用オウンドメディアの始め方と効果的な運用を解説
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労働人口の減少や転職市場の活発化により、多くの企業が深刻な人材不足に直面しています。従来の求人広告や人材紹介会社に頼った採用手法だけでは、優秀な人材の獲得が困難になってきているのが現状です。
求人サイトに掲載しても応募者が集まらない、面接まで進んでも内定辞退されてしまう、入社後すぐに離職されてしまう——このような課題を抱える企業が増加しています。これらの問題の根本には、企業の魅力や実際の働く環境が求職者に十分伝わっていないという問題があります。
そこで注目されているのが「採用オウンドメディア」です。自社で情報発信をコントロールし、企業の魅力を深く伝えることで、質の高い採用を実現する新しいアプローチとして、多くの企業が採用サイトとともに導入を始めています。
目次
1. 採用オウンドメディアとは
採用オウンドメディアとは、企業が自社で運営する採用に特化したメディアのことです。ブログ、動画、SNS、ポッドキャストなど様々な形式で、企業文化、働く環境、社員の声などを継続的に発信し、求職者との接点を創出します。
従来の求人広告との最大の違いは、「一方的な求人情報の掲載」から「双方向のコミュニケーション」への転換です。求人サイトでは限られた文字数や決まったフォーマットの中でしか情報を伝えられませんが、オウンドメディアなら制約なく自由に企業の魅力を表現できます。
また、求職者が企業について知りたいと思った時に、いつでもアクセスできる「情報のストック」としての役割も果たします。これにより、求職者は企業について深く理解した上で応募を検討できるため、ミスマッチの減少にもつながります。
2. 採用オウンドメディアのメリット
①企業側のメリット
採用コストの削減: 求人広告費や人材紹介手数料に依存する従来の採用手法と比べ、長期的には大幅なコスト削減が期待できます。一度構築したコンテンツは資産として蓄積され、継続的に採用効果を生み出します。
企業文化・価値観の伝達: 数行の会社概要では伝えきれない企業の理念、文化、価値観を、ストーリーや具体的なエピソードを通じて深く伝えることができます。これにより、企業の価値観に共感する人材からの応募を増やすことが可能です。
長期的な採用ブランディング効果: 継続的な情報発信により、採用市場での認知度向上と企業ブランドの構築が可能です。求職者だけでなく、将来の転職候補者層にもリーチし、中長期的な採用力強化につながります。
②求職者側のメリット
リアルな働く環境の理解: 実際に働く社員の声や職場の様子を通じて、求人票だけでは分からないリアルな働く環境を理解できます。これにより、より納得感の高い転職・就職判断が可能になります。
ミスマッチの削減: 企業について十分な情報を得た上で応募できるため、入社後の「こんなはずじゃなかった」というギャップを大幅に減らすことができます。結果的に、長期的な雇用関係の構築につながります。
3. 始め方の具体的ステップ
Step1: 目的・ターゲットの明確化
採用オウンドメディアを始める前に、まず「誰に」「何を」伝えたいのかを明確にしましょう。
ターゲット人材の設定: 年齢、経験、スキル、価値観などを具体的に定義
採用したい職種・ポジション: 各職種で求める人物像の整理
解決したい採用課題: 応募数不足、質の問題、早期離職など具体的な課題の特定
Step2: コンテンツ戦略の策定
ターゲットが知りたい情報と、企業が伝えたい情報のバランスを取ったコンテンツ戦略を立てます。
コンテンツカテゴリの決定: 社員紹介、仕事内容、企業文化、成長機会など
更新頻度の設定: リソースを考慮した現実的な更新スケジュール
トーン・マナーの統一: 企業らしさを表現する文体や表現方法の統一
Step3: プラットフォーム選択
ターゲット層の属性と、自社のリソースを考慮してプラットフォームを選択します。
ブログ形式: 詳細な情報発信に適し、SEO効果も期待できる
動画プラットフォーム: 視覚的に職場環境や社員の人柄を伝えられる
SNS: リアルタイムな情報発信と双方向コミュニケーションが可能
Step4: 制作体制の構築
継続的な運用を前提とした制作体制を整備します。
責任者・担当者の決定: 企画、制作、公開の役割分担
社員協力体制の構築: インタビュー協力者の確保と協力体制の整備
承認フローの設定: 公開前のチェック体制の確立
Step5: 運用開始
小さく始めて徐々に拡大していくアプローチがおすすめです。
パイロット版の制作: 数本のコンテンツで運用感覚を掴む
効果測定の開始: アクセス数、応募数などの基本指標の計測
改善サイクルの確立: 定期的な振り返りと改善の実施
4. 効果的なコンテンツ企画
①社員インタビュー・ストーリー
求職者が最も知りたいのは「実際に働く人の声」です。様々な職種、年次、バックグラウンドの社員にインタビューし、その人のストーリーを通じて企業の魅力を伝えましょう。
入社のきっかけ: なぜその企業を選んだのか
現在の仕事内容: 具体的な業務と一日の流れ
成長実感: 入社後にどのような成長を実感しているか
企業の魅力: 働いて感じる企業の良さ
②職場風景・一日の流れ紹介
オフィス環境や働く様子を視覚的に伝えるコンテンツも効果的です。
オフィスツアー: 働く環境の紹介
一日密着: 実際の業務の流れを時系列で紹介
チームワーク: 同僚との協力体制や雰囲気
③経営陣からのメッセージ
企業のビジョンや方向性を、トップの言葉で伝えることで信頼感を醸成できます。
企業理念・ビジョンの解説: なぜその理念を掲げるのか
事業の将来性: 今後の成長戦略と展望
求める人材像: どのような人と一緒に働きたいか
④研修・成長機会の紹介
キャリア形成を重視する求職者に向けて、成長環境をアピールします。
研修制度の詳細: 新人研修からスキルアップ研修まで
キャリアパス: 昇進・昇格の仕組みと実例
学習支援制度: 資格取得支援や外部研修の活用
⑤福利厚生・働き方制度の解説
ワークライフバランスを重視する現代の求職者にとって重要な情報です。
休暇制度: 有給取得率や特別休暇制度
働き方の柔軟性: リモートワークやフレックス制度
健康経営の取り組み: 健康診断や運動支援制度
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5. 運用のポイントとコツ
①継続的な更新の重要性
採用オウンドメディアの成功には継続性が不可欠です。単発の投稿では効果は限定的で、定期的な更新により信頼感と関心を維持できます。
更新スケジュールの策定: 週1回、月2回など現実的な頻度設定
コンテンツカレンダーの作成: 年間を通じたコンテンツ計画の立案
ネタ帳の活用: 日々の業務の中でコンテンツになりそうなネタの収集
②社員の協力を得る方法
多様なコンテンツを制作するには、多くの社員の協力が必要です。協力を得るための工夫が重要になります。
意義の共有: なぜ採用オウンドメディアが必要なのか全社で共有
参加のハードルを下げる: 簡単なアンケートから始めて徐々に参加度を上げる
感謝の表現: 協力してくれた社員への適切な感謝とフィードバック
③SEO対策の基本
より多くの求職者に発見してもらうため、基本的なSEO対策を実施します。
キーワード設定: 求職者が検索しそうなキーワードの調査と設定
タイトル・見出しの最適化: 検索エンジンに評価されやすい構成
内部リンクの活用: 関連コンテンツへの誘導で滞在時間向上
④SNSとの連携活用法
オウンドメディアのコンテンツをSNSで拡散することで、より多くの人にリーチできます。
プラットフォーム別の最適化: Twitter、Facebook、LinkedInなど各SNSの特性に合わせた投稿
ハッシュタグの活用: 関連性の高いハッシュタグでリーチ拡大
社員による拡散協力: 社員の個人アカウントでのシェア促進
プラットフォーム別の最適化: Twitter、Facebook、LinkedInなど各SNSの特性に合わせた投稿
社員による拡散協力: 社員の個人アカウントでのシェア促進
⑤効果測定の指標設定
採用オウンドメディアの効果を適切に測定し、改善につなげることが重要です。
アクセス指標: PV数、UU数、滞在時間、直帰率
エンゲージメント指標: いいね数、シェア数、コメント数
採用指標: 応募数、応募者の質、内定承諾率
6. よくある課題と解決策
①ネタ切れ問題への対処法
継続的な更新で最も多い悩みがコンテンツネタの枯渇です。
解決策:
社員アンケートの実施: 定期的に「最近どんな仕事をしているか」「何か変化はあったか」などを聞く
年中行事の活用: 歓送迎会、忘年会、研修、プロジェクト開始など定期イベントをコンテンツ化
業界トレンドとの関連付け: 業界の動向と自社の取り組みを関連付けたコンテンツ
他部署との連携: 人事部だけでなく、営業、開発、管理部門など様々な部署からネタを収集
②社員の協力が得られない場合
インタビューや写真撮影に協力的でない社員がいる場合の対処法です。
解決策:
段階的なアプローチ: まずは簡単なアンケートから始めて、徐々に協力度を高める
メリットの明確化: 採用成功により職場環境が改善されることを説明
協力者の表彰: 積極的に協力してくれる社員を社内で表彰・感謝
匿名での参加: 顔出しNGでも後ろ姿や手元だけでの参加を可能にする
③効果が見えない初期段階での継続方法
成果が出るまでには時間がかかるため、初期段階でのモチベーション維持が重要です。
解決策:
小さな成果の可視化: アクセス数の微増や良いコメントなど小さな変化も共有
他社事例の学習: 成功事例を学んで長期的な視点を保持
段階的目標設定: 「3ヶ月でPV1000到達」など達成可能な中間目標の設定
改善活動の継続: アクセス解析を基にした継続的な改善で手応えを感じる
④リソース不足の解決策
人員や予算の制約がある中での運用方法です。
解決策:
外部パートナーの活用: 制作の一部を外部委託して効率化
既存コンテンツの再活用: 社内資料や過去の取材記事の転用
テンプレート化: インタビュー記事などは質問項目や構成をテンプレート化
効率的なツールの導入: CMS、画像編集ツール、動画編集ツールで作業効率化
7.成功事例紹介
①トヨタ自動車株式会社【トヨタイムズ】
トヨタが行うオウンドメディアリクルーティングは、「採用色を出さない採用」として成功しています。
実際に記事を読んでみると、会社のトップ自らが”想いや体温”のようなものも含めてさらけ出していくことで、共感を得ていきたいという決意が感じられます。
社長自らがオウンドメディアに登場し、トヨタイムズの体現者となり、これまでとは異なる価値訴求を試みたことが、採用の面でも成功した要因になったのではないでしょうか。
②株式会社サイボウズ【サイボウズ式】
株式会社サイボウズ【サイボウズ式】は、自社メディア「サイボウズ式」を活用して、独自の採用戦略を展開しています。同社のオウンドメディア「サイボウズ式」は、創業者の青野慶久氏の考え方や社内の様子、エンジニアの仕事ぶりなどをリアルに伝えることで、求職者に魅力的な情報を発信しています。
採用ページではなく、普段の社内の様子を赤裸々に発信することで、リアルな姿を見せることに成功しています。この取り組みにより、内定者のエンゲージメント向上や、企業理解の促進が見込めるとして、多くの求職者に注目されています。
また、サイボウズ式では、毎月100,000PVを超えるアクセスがあり、ブログ記事の多くがSNSでシェアされるなど、Web上での影響力が高いことも特徴です。このように、採用オウンドメディアを活用することで、企業の魅力や情報を積極的にアピールし、求職者とのつながりをより強固なものにすることが可能です。
③エン・ジャパン株式会社【キャリアハック】
エン・ジャパン株式会社【キャリアハック】は、採用オウンドメディアを活用した成功事例の一つとして注目されています。同社は、企業の採用課題に焦点を当て、様々なコンテンツを発信することで、求職者との関係構築を図っています。その中で特に注目されているのが、社員インタビュー動画や働き方改革に関する記事です。
社員インタビュー動画では、現場の声をリアルに伝えることで、企業の魅力が具体的に伝わる効果があります。また、働き方改革に関する記事では、最新のトレンドや実践例を取り上げることで、求職者がその企業で働くイメージを持ちやすくなっています。
エン・ジャパン株式会社【キャリアハック】の取り組みは、採用オウンドメディアを使ったブランド構築という観点からも非常に優れていると言えます。その結果、多くの優秀な求職者との出会いを実現しています。成功事例として、同社の取り組みを参考にすることで、自社の採用活動に新たなアイディアを取り入れることができるでしょう。
④株式会社メルカリ【mercan】
株式会社メルカリは、オウンドメディア「mercan(メルカン)」を活用した採用活動で注目を集めています。mercanでは、メルカリの社風や働く環境、従業員の声などを紹介するコンテンツが豊富に揃っており、求職者に対してリアルなイメージを伝えることに成功しています。
また、mercanでは、従業員インタビューや社内イベントの様子、テック系の情報など、幅広いテーマの記事を通じて、メルカリがどのような会社であり、どんな価値観を持っているのかを伝えています。求職者はこれらの情報を通じて、自分にとってマッチする職場であるかどうかを判断する手助けにしています。
⑤株式会社サイバーエージェント【CyberAgent Way】
株式会社サイバーエージェントは、自社の採用オウンドメディア【CyberAgent Way】を活用し、独自の魅力を発信しています。このメディアでは、社員の声を中心に据え、働く環境や取り組み、企業文化など、リアルな情報を紹介しています。求職者は、社員が率直に語る声を通じて、会社の魅力や働くイメージを具体的に知ることができます。
こうした取り組みにより、株式会社サイバーエージェントは多くの求職者に訴求し、優秀な人材を採用することに成功しています。また、採用後も社員がメディアで積極的に発信を行うことで、社内外に向けた情報発信力を高め、ブランド価値の向上にもつなげています。
株式会社サイバーエージェントの【CyberAgent Way】は、自社の価値観や魅力を的確に伝えることで、企業ブランディングに大きな成果を上げています。その成功事例から、他社も自社の採用オウンドメディアの活用法に示唆を得ることができるでしょう。
8. 今後のトレンドと展望
①動画コンテンツの重要性
テキストベースのコンテンツに加えて、動画コンテンツの重要性がますます高まっています。
職場の雰囲気の伝達: 文字では伝わらない職場の空気感を動画で表現
社員の人柄: 表情や話し方から人柄が伝わりやすい
業務の実際: 実際の作業風景を見ることで仕事のイメージが具体化
動画制作のハードルは下がっており、スマートフォンでも十分なクオリティの動画制作が可能です。
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②Z世代へのアプローチ方法
新卒採用市場ではZ世代(1997年〜2012年生まれ)が中心となっており、彼らの特性に合わせたアプローチが必要です。
ショート動画の活用: TikTokやInstagramのリールなど短時間で要点を伝える
インタラクティブなコンテンツ: Q&A、投票機能など双方向性のあるコンテンツ
社会貢献性のアピール: SDGsや社会課題への取り組みを重視する傾向
③AIツールの活用可能性
AI技術の進歩により、コンテンツ制作の効率化が期待できます。
文章作成支援: AIライティングツールによる下書き作成
画像・動画編集: AI技術を活用した効率的な編集作業
多言語対応: 外国人採用に向けた自動翻訳機能の活用
ただし、AIはあくまでも支援ツールであり、企業の魅力や社員の想いを伝える部分は人間が担う必要があります。
9. まとめ・行動への促し
採用オウンドメディアは、企業と求職者をつなぐ新しいコミュニケーション手段として、今後ますます重要性を増していきます。従来の採用手法では伝えきれない企業の魅力を深く発信し、質の高い採用を実現するための有効な手段です。
①重要ポイントの再確認
1)継続性が成功の鍵: 短期的な成果を求めず、長期的な視点で取り組む
2)社員の協力が不可欠: 全社的な理解と協力体制の構築が重要
3)ターゲット志向: 誰に何を伝えたいかを明確にしてコンテンツを制作
4)効果測定と改善: データを基にした継続的な改善活動
②今すぐ始められる小さな一歩
採用オウンドメディアを始めることに「完璧な準備」は必要ありません。まずは小さな一歩から始めてみましょう。
社員1名へのインタビュー記事: 最も身近な同僚にインタビューして記事化
オフィスの写真撮影: スマートフォンで職場の様子を撮影してSNSに投稿
既存資料の活用: 会社説明会資料や研修資料をブログ記事に再構成
③長期的な視点の重要性
採用オウンドメディアの効果は短期間では現れにくいものです。しかし、継続的な取り組みにより、以下のような長期的な成果が期待できます。
採用コストの大幅削減: 求人広告費への依存度低下
採用力の向上: 企業認知度向上による応募者増加
離職率の改善: ミスマッチ削減による定着率向上
企業ブランディング: 採用以外の事業面での好影響
採用難時代を勝ち抜くためには、従来の手法にとらわれず、新しいアプローチに挑戦する姿勢が重要です。採用オウンドメディアは、その有力な選択肢の一つといえるでしょう。
まずは小さな一歩から始めて、自社らしい採用コミュニケーションを構築していくことをお勧めします。継続は力なり——この言葉を胸に、長期的な視点で取り組んでください。

執筆者:株式会社ゴマシオカンパニー 代表取締役 山崎準也
ゴマシオカンパニーは、採用広報支援を目的としたクリエイティブを得意とする企画制作オフィスです。この分野で20年以上実績を積み上げてきた代表を中心に、様々な分野のクリエイティブを得意とするスタッフが、日々アイデアを出し合い、お客さまの採用課題解決に尽力しています。
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